
こんにちは。起業1年目、株式会社coiai代表の服部陽良です。
ものづくりを軸にシステム開発やプロダクト開発を行っているIT会社の創業者として、毎週月曜にこの番組で起業のリアルを発信しています。
今回のメイントピックは、Anthropicが公開した新モデル「Fable 5」を試した話と、「構成と装飾」というデザイン論。後半は、需要と供給、安請け合い、マニュアル車から考えるUI、経営者の予算計画と、いつも以上に話があちこちに広がっています。
まず1つ目。AnthropicがMythosのレベルに匹敵するモデルとして話題になっていた、改良版(制限を加えたバージョン)の「Fable 5」を、一般ユーザー向けに公開しました。当初は22日まで利用可能というアナウンスだったのですが、今は状況が変わってしまっています。後で書きます。
発表されてすぐ、いろいろ試してみました。
まず業務アプリの制作を試しに頼んでみたのですが、正直なところ「微妙」というのが第一印象でした。
何が微妙かというと、ユーザーインターフェースやコース構造/構成といったところ。我々の会社というより、僕個人の技量の方がまだ上だな、と思いました。ただし、自走能力(指示をどんどん解釈して進める力)は素晴らしいです。UIが最高か、というとそうじゃない。AIが万能、とは僕は今のところ思っていません。
一方、僕が関わっているプロジェクトのうちUnity案件のリファクタリングを頼んでみたところ、かなり良くなりました。なかなか改善ができずエラーが出ていた箇所だったのですが、Fable 5に渡すと動作も安定するようになって、これは「やっぱりすごいな」と思いながら使っていました。
そうしたら、アメリカ政府の要請で停止されてしまったんですよね。現在はアメリカ国内でしか使えない状態になっています。
ネットで調べたところ、VPNを使ってアメリカのIPアドレスからアクセスしたとしても使えないみたいで、アメリカ国内に住んでいることが分かるような情報(クレジットカード情報など)も判定材料になっているのではないかと言われています。普段アクセスしているIPアドレスなども見られているのかもしれません。米国在住かどうかを結構厳しく判断されているようで、現状、日本からのアクセスはほぼ不可能という状態です。
嬉しいニュースのつもりが、すぐ残念なお知らせになってしまったな、という回でした。
ここから今週のこと。今週は結構忙しくて、まず僕が今、合宿免許に来ています。車の免許です。
僕は高校卒業してからずっと働いていたり、働いていない時期はうつ病で寝込んでいたりして、車の免許を取る暇がありませんでした。ただ、7月から地方で仕事をする関係で車が必須になり、ようやくこのタイミングで合宿免許に来ています。
合宿免許にデスクトップPCをリュック型のケースに入れて持参してきていて、宿舎で仕事をしている、という感じです。免許の講習を受けるか、仕事をするか、というかなりストイックな生活を送っています。開発、提案書、請求書、経理 … と1つずつ片付けています。
スタートアップの辛いところは、全部自分でやらないといけないところですね。社員もいるのですが、条件付きの社員だったり、もう一人の代表の竹村に至っては、インベスター/有志的な立ち位置でもあるので、あまり実務は振っていません。仕事を振ってはいるけれど「パーティーピーポー」枠でもある、という感じです(笑)。
それでも、彼がいないと僕の心は崩壊してしまうので、彼の存在は欠かせません。
ここから、今週ずっと考えていたデザインの話。
僕が作るものは、自分でも結構自信があります。特にUIとデザインの面で。どこに自信があるかというと、「構造」なんです。どこにどのボタンを配置して、どういう動作をさせていくか、という構造/構成の部分。
ただ、これって、構造や構成について勉強していない人から見ると、まったく理解されないんですよ。良さがわからないか、もしくは「それが普通だと思われてしまう」。
具体的に言うと、僕が作ったアプリの構成を他社が真似しても、誰も気づかない。逆に装飾はすぐバレる。
例えばマリオのボタンの色って、なんとなく思いつくじゃないですか。「カービィのUIだな」「スマブラのUIじゃん」みたいなのも、一発でわかる。これは何を見て判断しているかというと、構造そのものではなく、その装飾(衣装)の部分なんですよね。
構造が似ているからといって訴えられることは、たぶんあまりない。例えばRPGなんて、ぶっちゃけ同じような仕組み・構成じゃないですか。「物語があって、主人公たちがいて、敵を倒していく」。これが「RPGの構成だからやめてください」とRPGの祖が言うことはまずない。
一方、ポケモンに似すぎているゲームの話。あれはポケモンの「構成」に似ているというより、キャラデザがポケモンに寄りすぎているから訴訟リスクが出てくる。モンスターを捕獲する/倒すゲーム自体はいっぱいある(モンスターハンターもそうですよね)。装飾をパクるとバレやすい。バレるし、不快な気持ちにもなる。
構成や構造はパクってもあまりバレないし、むしろ「よく勉強しているな」と褒められる場合もある。
これがデザイナーとしては結構切ない話で。
一度でも良い構成を相手から聞いたり、自分が体験することでインプットされてしまうと、それが当たり前になるんですよね。そして、その構成よりクオリティが低いものを見ると「ダサい」と感じてしまう。
なので、僕がどんなに良い構造のアプリを作ってクライアントに見せたとしても、その瞬間にクライアントは「これは自分も思いついていた」と思ってしまう。これ、わかりますか? どんなに使いやすいアプリの構造を考えて提示しても、見せた瞬間に「自分が思いついた」にすり替わってしまう、という現象です。
装飾は盗みにくい。かなり細かい話だし、アイディア勝負の部分なので、「この装飾はあの人しかできないよね」とはなりやすい。一方で「この構成・構造を思いつくのは、あの人しかできないよね」とはなりにくい。
僕は装飾/衣装はあまり得意ではないんですよね。普段着るものも、トラッドなものが好きです。トラッドって、構成の勝負だと思っているんですよ。
例えば、ブレザーにはオックスフォードクロスのシャツ、レジメンタルタイ、グレーフランネルのスラックスを合わせると望ましい。スラックスをパイプステムにするか、マリンパンツのオマージュにするか、マリンパンツ寄りならブルーでも良い、みたいに、条件分岐で組み合わせる「構成構造の美学」。それがトラッドだと思っています。
そこから抜けてより面白いことをしている人たちが、ファッションの世界。ドレスクロージングは「構成の美」が大きい領域だと思っていて、僕はそこが好きなんです。
アプリのデザインも同様で、僕は構成や構造が好き。装飾は好きですが、得意ではないと自分では思っています。装飾の領域はアーティストと呼ばれる人たちの方が圧倒的に美意識が高く、僕はそこまで達していないと評価しています。
ただ、構成は相手に良さが伝わりにくい分野なので、いくら良い構成のものを作っても、ちゃんと評価されて高い値段で取引されるかというと、そうじゃない。これがリアルなところです。
ここで関連する話として、需要と供給の話を少し。
中学校で習う単純なモデルでは、消費者が欲しがるほど値段は釣り上がり、いらないものは値段が下がる、供給量が増えれば安くなり、減れば高くなる、相互関係にある、と教わります。
でもこれは、消費者が正しい判断ができるという「理想空間」上で成り立つモデルなんですよね。実際は、消費者は正しいもの・良いものに対して「欲しい」と思ってくれるとは限らない。
需要は、マーケティング、ムーブメント/人気、流行、いろんな要素でコントロールされる。ここがかなり複雑なので、説明が難しい部分です。
僕たちが他社よりも良いものを提案しても、それが「良いもの」だとクライアントに伝わるかどうかは別の話。良いものを作ったからといって、需要が高まって価格が上がる、ということはほぼ難しい。
そして実際には、多くの場合「権威」によって決められている。「大手企業か、まだ実績を上げていないスタートアップか」というところで判断されてしまう。
しかも、プロダクトの良し悪しは、消費者・クライアントは基本的にわからないんですよね。数千万円・数億円の決裁を下す人と、現場でそのサービスを使う人は別人だからです。現場の人にしか「使いやすい/使いにくい」は判断できないのに、決裁するのはもっと上の人。これでは良し悪しが伝わりようがない。
なので、スタートアップはマーケティングやプレゼンテーションで権威性を高めていく必要があるな、と最近よく思います。
これは別の話。安請け合いをするのを、なるべくやめていきたいと考えています。
個人事業主だった頃は、本当に何でも仕事を受けていました。色々経験できて良かった面もあります。ただ、今後は自分の利益だけではなく、社員みんなにちゃんと給料を支払う立場でもあるので、安請け合いは本当に良くない。
例えば1000万円以下の案件を受けるとして、ホームページ制作なら全然いいんです。ホームページが欲しい方って、小さい会社や個人事業主、自分でお店をやっている方が多い。仕事を通じた社会貢献的な意味もあるので、手の届く価格で作りますよ、と提案できる。
ただ、業務システムやSaaSを「安請け合いのコーダー」として受けるのはやめようと思いました。せっかく要件定義をして、設計して、実装して作ったプロダクトを、100万円以下で知財も含めて売り払うのは、まったく割に合っていない。
だってそれを我々が自社でやれば、自社のプロダクトになるじゃないですか。それを数十万円で受け負うのは、自傷行為に近いんじゃないかな、と。
ここで、ちょっと面白かった話を1つ。
「曲作りにおいて、メロディーが装飾、コード進行が構成にあたるんじゃないか」と、知人が言っていて、これは良いことを言うな、と思いました。
例えばコード進行や曲の展開は、パクってもほぼ何も言われない。同じ展開で同じアーティストが似たような曲を作っても、消費者からしたら「流行った曲と同じ感じの構成で違うメロディーが入って盛り上がる」って、むしろ嬉しい現象だと思うんですよね。流行るし。
現代のミュージシャンが、モーツァルトやバッハの曲の構成を勉強して、今の曲作りに活かしていますと言ったら「よく勉強しているな」となる。一方、メロディーをそのままパクるとダサいし、現代のミュージシャン同士で同じメロディーを使ったら、オマージュやサンプリングを超えた瞬間にパクリになる。
デザインと作曲を並べたとき、構成・構造と装飾=メロディーが綺麗に対応している。すごく素敵な話だな、と思いました。
これもデザインの話。僕は今、車の免許をマニュアルで取っています。
マニュアルの自動車って、めちゃくちゃ良いな、と思っているんです。何が良いかというと、機械の構造をユーザーが知ることで操作できるというところ。クラッチ操作、ギアの操作、エンジンの回転数やトルク……それを極めてシンプルなUIでユーザーに渡して、操作自体は学習が必要、という設計。
機械の構造を操作するためのユーザーインターフェースが与えられて、それを人間が学習することで操れる、というのは、すごく素晴らしいUIだなと、マニュアル車に対して思っています。
これは、デザインが好きな人なら絶対読んだことがあるドナルド・ノーマンの『誰のためのデザイン』に出てくる話。冷蔵庫のつまみが「ひねればひねるほど冷える」というUIだったら、めちゃくちゃ分かりやすいですよね。それは機械の構造と一致しているから。風量や冷却量を変更する仕組みと、UIが一致しているから分かりやすい、という例です。
マニュアル車もこれと同じ構造だな、と思いました。ユーザーが学習することで操作を切り替えられるというのも素晴らしい。
もちろん、オートマのように「誰でも運転できる」UIにすることも素晴らしいですし、機械より工学的な部分をユーザーに委ねるのも素晴らしいデザインだな、と。両方ともそれぞれの美しさがあると思った話です。
最後に、今週やった経営の話。大きめの仕事が入るので、予算の計画を立てました。
経営者自身が予算計画を見て、自分で計算するって、結構大事なことだなと思いました。
我々経営者は、お金を使いたい生き物なんですよね。当たり前かもしれませんが、
と、つい思ってしまう。
ただ、それが本当に「できるかどうか」を確認する唯一の方法が、予算計画と会計なんです。
今週は半年分の会計と、今後入ってくるお金を見据えた予算の振り分けをやったのですが、これが経営者にとってのブレーキになる唯一の方法だな、と思いました。
非常に勉強になったし、未来を考えるきっかけ、確実に未来を歩むためのきっかけになりました。経営者は、定期的に自分で数字を触る方がいいです。
今週はここまでです。
株式会社coiaiでは、以下の事業を行っています。
我々は、どんなご提案・どんなご要求に対しても、素晴らしいUIのものをお作りすることをお約束します。今日お話しした構成・構造の部分で自信があります。
現場第一主義 — 現場の人が使いやすく、働きやすい環境を作ることに、私たちと一緒に取り組んでみませんか。お見積もりは無料ですので、何でもお気軽にご連絡ください。
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